無料ツールで始めるデータ分析

Google Sheetsで実践!予実管理と差異分析入門

Tags: 予実管理, 差異分析, Google Sheets, データ分析, 無料ツール

予実管理と差異分析とは?ビジネス成果の現状を把握する第一歩

ビジネスにおいて、計画と実績を比較し、その違い(差異)を分析することは非常に重要です。このプロセスを「予実管理」と呼び、特に計画と実績の差を明らかにし、その要因を探ることを「差異分析」と言います。

予実管理と差異分析を行うことで、ビジネスは以下のようなメリットを得られます。

しかし、「専門的なツールが必要なのでは?」「どのように分析すれば良いのか分からない」と感じ、一歩を踏み出せていない方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、普段お使いの表計算ソフトであるGoogle Sheetsを活用し、コストをかけずに予実管理と差異分析を始めるための具体的なステップをご紹介します。

なぜ予実管理・差異分析にGoogle Sheetsが適しているのか

予実管理や差異分析を行うためのツールは数多く存在しますが、データ分析初心者や、コストをかけずに始めたいという方にとって、Google Sheetsは非常に有効な選択肢となります。

メリット:

デメリット:

これらの特性を踏まえると、Google Sheetsは、まずは小~中規模のデータで基本的な予実管理・差異分析を始めたい、チーム内で手軽にデータを共有したい、といった目的に非常に適していると言えます。

Google Sheetsで予実管理・差異分析を始める準備

予実管理・差異分析を行うためには、以下の2種類のデータが必要です。

  1. 計画値(予算)データ: 設定した目標や計画の数値です。例えば、売上目標、費用予算、生産目標など。
  2. 実績値データ: 実際に発生した結果の数値です。例えば、実際の売上、実際の費用、実際の生産量など。

これらのデータを、日付や期間、部門、製品、顧客などの軸で整理した形式でGoogle Sheetsに入力します。例えば、以下のようなシンプルな表を作成します。

| 日付 | 部門 | 製品ID | 計画売上 | 実績売上 | | :----- | :------- | :----- | :------- | :------- | | 2023/10/1 | 営業A部 | P001 | 100000 | 95000 | | 2023/10/1 | 営業B部 | P002 | 80000 | 82000 | | ... | ... | ... | ... | ... |

このような形式で、分析したい期間のデータを準備してください。データがすでに他のシステム(会計システム、CRMなど)にある場合は、CSVファイルなどでエクスポートし、Google Sheetsにインポートして利用するのが効率的です。

Google Sheetsでの予実管理・差異分析の具体的な手順

ここでは、上記の準備で作成したデータを使って、具体的な差異分析の手順を見ていきましょう。

ステップ1:差異額の計算

まずは、計画値と実績値の「差額」を計算します。新しい列を作成し、実績値から計画値を差し引く数式を入力します。

例えば、実績売上がE列、計画売上がD列にある場合、F列に「売上差異額」という列を追加し、F2セルに以下の数式を入力します。

=E2-D2

この数式を他の行にもコピーします。F列には、実績が計画を上回っていればプラス、下回っていればマイナスの値が表示されます。

ステップ2:差異率の計算

差異額だけでなく、「差異率」も計算することで、計画値に対する差異の大きさを相対的に評価できます。新しい列を作成し、差異額を計画値で割ってパーセンテージ表示にします。

G列に「売上差異率」という列を追加し、G2セルに以下の数式を入力します。

=IFERROR(F2/D2,"")

IFERROR 関数を使用しているのは、計画値(D2)がゼロの場合にエラー(#DIV/0!)が表示されるのを防ぐためです。計画値がゼロの場合は空欄を表示するようにしています。この数式を他の行にもコピーし、列の表示形式を「パーセント」に設定してください。

これで、各項目や期間ごとの差異額と差異率が算出されました。

ステップ3:合計や平均で全体像を把握する

データ全体、または特定の期間や部門ごとの合計や平均を計算することで、全体の予実状況を把握できます。

また、ピボットテーブル機能を使うと、部門別や製品別、月別などの切り口で、合計売上、合計計画売上、合計差異額、合計差異率などを簡単に集計できます。

ピボットテーブルを使うことで、どの部門や製品が予実から大きく乖離しているかなど、多角的な視点から集計結果を確認できます。

ステップ4:条件付き書式で重要な差異を目立たせる

差異が大きい項目や、計画を下回っている項目など、特に注目すべき部分を視覚的に分かりやすくするために、条件付き書式を活用します。

例えば、売上差異率が特定の閾値(例: ±10%)を超えているセルや、差異額がマイナスになっているセルに色を付けることができます。

視覚的に差異の大きい箇所を素早く把握できるようになり、分析の効率が向上します。

ステップ5:グラフでトレンドや比較を「見える化」する

算出した差異データや予実データをグラフにすることで、期間ごとの推移や、部門・製品間の比較などを直感的に理解できるようになります。

グラフは予実管理レポートの主要な要素となります。傾向や課題を視覚的に捉え、関係者との共有や説明に役立てることができます。

よくある疑問と注意点

Google Sheetsを使った予実管理・差異分析は、あくまでデータ活用の基本的なステップです。ここでの分析結果を基に、さらに詳細な分析や、データに基づいた具体的な行動計画に繋げていくことが求められます。

まとめ:Google Sheetsで始める予実管理・差異分析

この記事では、無料ツールのGoogle Sheetsを使って、ビジネスの計画と実績を比較する予実管理・差異分析の基本的な手法をご紹介しました。

具体的なステップとして、

  1. 計画値と実績値のデータ準備
  2. 差異額と差異率の計算
  3. SUMやピボットテーブルによる集計
  4. 条件付き書式による差異の可視化
  5. グラフによるトレンドや比較の把握

を解説しました。

これらの手順を実践することで、自社のビジネスが計画通りに進んでいるか、どの部分で課題が発生しているかなどを具体的な数値で把握し、「なぜ」その差異が生じたのかを深掘りするための手がかりを得ることができます。

Google Sheetsは、データ分析の専門家でなくても、普段の業務で表計算ソフトを使っている方であればすぐに取り組めるツールです。まずは自社の小さなデータからでも構いませんので、予実管理と差異分析を実践してみてください。データに基づいた現状把握は、ビジネスの改善に向けた確実な一歩となるはずです。

さらに分析を進める際には、Google Sheetsの機能をさらに使いこなしたり、Looker Studioのような無料のBIツールと連携させてより高度なダッシュボードを作成したりすることも検討できます。データ活用の旅はここから始まります。